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Perfect Day 17

マルセイユでの公演が終わった

翌日のオフ

 

公演がある日はつらいので

海外での移動もなにもないオフの日は

それだけで輝いて見えます

 

朝食に

自然と

みんなおんなじ時間に集まってきて

みんなでごはんを食べるのが、好き

 

だれに取られるでもないのに

ものすごくがっついて

ごはんを食べるひとがひとりいて

 

そのひとのがっつく様子を見ながら

食欲失せつつ食べる

 

みんなでチンチン電車に乗って

ホテルのフロントで聞いたプライベートビーチへ

 

白と煉瓦色の街並みを抜けていくと

見たことのない色をした海

濃い藍みたいな、色だった

 

岩場にシートを敷いて

みんなそれぞれ寝たり

本を読んで、フランス語を勉強したり

沖にある大岩まで泳いで競争したりした

 

ごはんをがっつくやつは

泳ぎ方もがっついていて

やはりそれを遠目から眺めつつ泳ぐ

 

ダイビングもシュノーケリングもしたことないのに

いきなり大海に放り込まれて

クジラと泳いだ日のこと

 

となりで泳ぐひとが

フィンをつかい慣れていないのか

溺れそうになっていて、手を握り合いながら泳いだ

 

船のうえで、クジラの歌を聴いた

 

街まで戻って、ジェラートを食べ歩きして

美術館で演劇かパフォーマンスかなにかを

みんなで観た

 

終わって外に出るともう夜で

港の観覧車に

みんなでぎゅうぎゅうになって乗る

 

夜ごはんは港でズィール、カキをみんなで食べる

やつはカキもがっついて食べる

 

みんなでホテルまで歩いて帰る

 

みんなで、というのが

わたしの中の条件なのかもしれない

 

なんでも完ぺきを求めすぎだとよく言われる

みんなに完ぺきを押しつけているのかもしれない

 

ほんとうに食べたいわけじゃなくて

完ぺきのために

ジェラートを食べている、気がする

 

ぜんぶ嘘

というか、それらはつくられたものでしかない

 

あの日、舟のうえで聴いたクジラの歌

あれも、つくられたものでしかないの

 

©mum&gypsy cocoon