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Perfect Day 1

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    Perfect Day 1

    窓から差し込むひかりで目が覚める

    朝、9 時くらい

    はやすぎず、おそすぎないのがいい

     

    ご飯と、お味噌汁

    目玉焼きとウィンナー

    トマトがはいった、サラダ

    フルーツは、桃か梨がいい

    季節のことも、あるけれど

     

    いろいろ食べたい朝だった

     

    洗濯をする

    タオルとシーツ、お洋服の柔軟剤はつかい分けたい

    窓がおおきいし、天気もいい 干すのが気持ちいい

     

    ずっと着ているワンピースで、きょうは過ごしたい

     

    お昼ごはんは、友だちと食べたい

    よさそうなところで食べてみたい

     

    「ね、あそこで食べたことある?」

    「んー、ないかも。行こうかねえ」

     

    パフェを、無性に食べたい

    季節のフルーツと

    おもいがけない組み合わせ

    食べてる最中も

    食べたあとにも

    そのパフェについて、あおいと話したい

     

    あやが働いているカフェを、ひやかしにいく

    ひやかすっていったって

    飲みものをテイクするとかそれくらいだけど

     

    「おお、おお。来たよ」

    「ああ、はるか。どうしたの」

    「いや、べつにー。なんにも」

     

    カフェオレを片手に、古道具屋さん 古着屋さん

    まあたらしいものを、手にするよりも

    時間を経たもののほうがうれしくなる

     

  •  

     

    Perfect Day 2

    朝7時くらいに、すっと目が覚める

    きのうの夜、加湿器をつけておいたので喉が痛くない

     

    股のあいだには、犬

    あたたかい、いつも

    30分くらい二度寝

     

    犬を起こさないように

    そっと、布団から出る

     

    部屋はどこも、すべてきれい

    ほんとうそみたいに。空気も

     

    洗顔と歯みがき

    鏡を見ても、顔はむくんでいない

     

    砂糖たっぷりのミルクティーを淹れて

     

    外にでる、犬と

    すれ違ったひとたちに挨拶をする

    「おはようございまーす」

     

    近所の花壇のまえ

    ありがちな赤とか黄色のちいさなお花

     

    いつも、井戸端会議をしているおばあさんたちは

    わたしの犬が好きみたいなので、そこを経由して

     

    「そうなんですよー」

     

    河川敷を歩く、ひたすら天気がいい

    暑いのは、好きじゃないから

    きょうくらいが、ちょうどいい

     

    それに、きょうは肌荒れはないし

    奇跡のように、化粧ののりがいい

    前髪も、いいかんじに決まったし

     

    お気にいりのワンピースだし

     

    10時半に、予約していた美容院へ

    整えるかんじのカットと、トリートメント

     

    三年間、担当している美容師さん

    でも、まだ名前を憶えていない

     

    最初のアンケートに

    “施術中は話しかけないでほしい”という項目に

    〇をしたことで

    ほんとうにずっと話しかけてこないのかもしれない

     

    だから、名前が憶えられない

    淡々とやってくれるから気にいっている

     

    髪の毛つるつる!

     

    すこしおそめの、昼食

    かわいい喫茶店で

    卵サンドウィッチ、ふわふわ

    それと、ミルクティー本日、二杯目の

     

    気にいっていたのに、落としてしまった

    もう売られていないイヤリングが

    出品されていないか、チェック!発見!

     

    すぐに、買う

    今日はいい日だなあ、と

    まったりする

     

    デパートを、ぶらぶら

    とくになにを買うか決めず

    そんな買う気がなかったリップ

    なんとなく、手にする

     

    店員さんに話しかけられる

     

    「そのリップ、人気ですよ。

    キャッチフレーズは

    <ぜったいかわいくなるリップ>です!」

     

    ふたつ、買う

     

    ひとつは自分用に

    もうひとつは、つかってみてよさそうだったら

    だれかにあげる用に、かわいく包んでもらった

     

    つねに

    だれかにあげれるプレゼントは

    持っておきたいタイプだから

     

    そのあとも

    本屋に行ったり

    お洋服を見たり

    雑貨を、見たり

     

    とくに買わないけど、ぶらぶら

     

    駅のホームで、買ったリップをつけてみる

    おいしい香り、味もいちごっぽい

    テンションが上がる

     

    帰宅

    部屋はやっぱりうそみたいに、きれい

    空気も

     

    犬と散歩へ出かける

     

    夜道、ほとんどひとがいない

    ちょうどいい気温

    月がきれい

     

    犬は、上機嫌そうに

    尻尾を、ふっている

     

    わたしは、ずっーと

    犬に話しかけている

     

    散歩を終えて

    ふたたび、帰宅して

    ゆっくりお風呂につかる

     

    出たらすぐに、髪の毛を乾かす

    ブローまで、きちんと

     

    トリートメントの効果がまだつづいている

     

    つるつる!

     

    そうだ、今日買った

    <ぜったいかわいくなるリップ>は、

    あの子にあげよう!

    と、ふとおもいつく

     

    ベッドに行くと、犬もついてくる

    いつもどおり、わたしの股のあいだ

    あたたかい

    ラジオを聞きながら、眠る

     

  •  

     

    Perfect Day 3

    旅行をしたときの、ある一日

    7時ころ

    慣れない国の安宿にて起きる

     

    まだはやいから二度寝をした

     

    9時ころ、ほんとうに起きて

    水は、だいたい硬水だからか

    とてもお通じがよい

     

    そんなつもりはなかったのに

    びっくりするくらい

     

    フルーツとかチーズが

    とにかく、美味しくて

    そして、食べても食べても

    お通じがよいので気持ちいい

     

    9時半ころ、

    昨夜スーパーで買ったヨーグルトを食べる

    この国では、

    わりと毎朝おんなじメニューを食べている

     

    11時ころ、ちがう国へ向かうために空港へ

    もじゃもじゃ頭の安宿のオーナーと 、バイバイする

    写真も撮る

     

    「ちょっと、一枚いいですかね」

     

    14時ころ

    小型飛行機で出発する

     

    17時ころ

    三時間くらいのフライトで、到着

    静かで寒い

     

    あたらしい宿は、

    こじんまりとしていてかわいい

    夜へと向かう町を、探索する

    静かな住宅街

     

    19時ころ

    物価が高いけれど、夕食はレストランで

    肉料理を食べたけど、そんなに美味しくない

     

    21時すぎ

    ライブハウスへ行く

    観客の、おそらくこの町に住む

    女の子たち なんだとおもう

    古着のワンピースを、

    かわいく着こなしていてとてもいい

     

    23時ころ

    あしたは 、ブルーラグーンという

    巨大天然温泉にいくので

    それをたのしみに眠る

    オーロラも、ひとりで見にいきたいとおもう

     

  •  

     

    Perfect Day 4

    部屋のなか

    あかるい、あたたかい

    しばらく、ふとんの中でジッとする

     

    窓を開ける

    顔を洗う

    お湯を沸かして、コーヒーを淹れる

     

    パンを焼く

    ラジオをつける

    ソファで、ゆっくりたべる

     

    歯をみがく

    着るお洋服を、パッときめる

    本を三冊くらい、えらぶ

    持って、でかける

     

    散歩しつつ、本屋へ

    好きなだけ本屋にいる

    ずっと読みたかったけど

    忘れていた本が見つかって、買う

     

    コーヒー屋さんにて、休んで

     

    本を読んだり、おもいついたことを日記に書く

    夕方、友だちのこいしに会う

    いつもの、待ち合わせ場所で

     

    霊園とかを散歩して

     

    「この半年間で、なにがあったとか憶えてる?」

    「そうだねえ、

    いろいろありすぎたといえばそうだけど」

    「うんうん」

    「でもそんなに変わったこともないといえば

    そうだなあ」

     

    そのうちおなかがすいたら、

    いっしょにごはんをたべる

     

    それで、やがて別れて

    わたしの部屋へ帰って

     

    お風呂にはいったあと

    ストレッチをして

    歯をみがいて

    ソファにて、映画を観る

     

    そのとき、一番観たいやつを

     

    机で、日記を

    物語を想像したり、書いたり

     

    眠くなったら、眠る

     

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    Perfect Day 5

    とくに、なんの予定もない日

    二度寝できるのに、清々しく目が覚める

    しかもまだ、だいぶ朝

     

    鏡を見たら、きのうまであったはずの

    ニキビの痕が、消滅している

     

    シンクには洗っていないお皿やお茶碗が

    ひとつもない

    お米もきのうの夜

    ちゃんと炊いたらしい

    オムレツをつくって食べた

     

    ゴミ出しにも、成功する

    帰りにポストを見たら

    雑誌の最新号が届いていた

     

    忙しすぎて、

    きょうが発売日だってことを忘れていたけど

    購入予約を忘れていなかった

    過去のじぶんを誇りにおもう

     

    紅茶を飲みながら、読んだ

     

    友だちから「これから来ないか」と誘われた

    よく急に呼びだしてくる、友だち しずる

     

    暇だし行くことに

     

    「けっこう、まとめてくるひとっているんだよなあ」

    「まとめてくるひと?」

    「一瞬とか、人生とかって、

    言葉でまとめられるものなのかなあ」

     

    ひとりでいるときよりも

    だれかといるときのほうが、

    さみしい気がしていたんだけど

    しずると話しているときは、

    そういうのがどうでもよくなる

     

    自転車で帰った 寒くて、つめたかった

    夜の暗闇、そして静けさ

    なんだろう、なぜだか 情緒をかんじる

     

    あつい湯船につかる

     

    とつぜん、もうここにいるのは限界な気がした

    この生活とか、部屋とか

    わたしを取り巻くサイクルが

     

    でも、いまから知らないどこかへ

    行くわけにもいかないから

     

    まんがを読んで、寝る

    すぐに眠ることができた

    シーツも洗ったばかり

     

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    Perfect Day 6

    いままで 

    完ぺきな一日だとおもえた日はない 

    想像もできない 

     

    断片的に 

    シーンとして 

    たとえば、なにか景色を見たときとか 

     

    朝日とか、夕陽とか 月とか 完ぺきだなあ、

    っておもうことはある 

     

    でもそれを見つめる時間というのは、

    一瞬で変わってしまうものだし 

     

    じぶんの行動によって 

    伴うものに関して、

    いいとかわるいとかおもったことがない 

     

    というか、じぶんの一日を

    そう俯瞰したことがないというか 

     

    他人が見て 

    わたしのこれをどうおもうか、

    とかも想像したことがない 

     

    おつりを、こまかく払えたとか? 

    一本、はやい電車に乗れたとか? 

     

    ただ、もしかしたら 

    完ぺきな時間の最中にいて 

    わたしは、じぶんのそれに

    気がついていないだけかもしれない

     

    ひとつだけわかることは、完ぺきな時間 

    かがやくような時間は永遠ではないこと 

     

    なにかを達成したあと 

    完ぺきだとおもえる瞬間は 

    やってくるのだろうか? 

     

     

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    Perfect Day 7

    6:00 

    ここは、日本ではない 

    ひろめのホテルの一室 

    起きる 

     

    高層階にある、おおきな窓があって 

    外がよく見える部屋 

    併設されてあるスタジオで 

    ヨガと、瞑想を 

     

    8:00 

    友人のあやが 

    ホテルまで来てくれて 

    おいしい朝食をいっしょにとる 

     

    「ひさしぶり、どう?」 

    「どうって、なんだ?」 

     

    10:00 

    散歩をする 

    ホテルの敷地内、見慣れぬ風景がひろがっている 

    めずらしい鳥が、鳴いていたり 

    湿気のかんじもちがう気がする 

     

    11:00

    ホテルのスパでマッサージを 

    オイルのやつ 

    頭のもあったけど、時間がかかりそうだからやめる 

     

    13:00 

    部屋でゆっくりすごしつつ 

    ルームサービスで、軽めのランチ 

    サンドウィッチ、フルーツとかも 

     

    15:00 

    ゆっくり時間をかけて、出かける準備 

     

    17:00 

    カフェへ 

    すごいひろくて、天井も高めの 

    にぎやかな植物 

     

    18:00 

    好きなアーティストの 

    野外で行われるライブへ 

     

    21:00 

    なんとなく合流できた友人、サンと夕食 

    辛めの肉料理、お酒も 

     

    24:00 

    ホテルにもどる 

     

  •  

     

    Perfect Day 8

    一度目のアラームで、起床 

    寒すぎないし、晴れている 

    メガネをかけて、ロスタイムなく布団から出る 

    布団を整えて、二段ベッドのうえから降りる 

     

    洗面所で顔を洗いコンタクトレンズをいれて 

    髪を梳かし、ヘアオイルをつけて 

    顔に化粧水を 

    眉毛を、かく 

     

    きのうからだいたい 

    決めていた服を着る 

     

    さいきん気にいっているジーンズ 

    ロンT、セーター 

    ネックレスを着ける 

     

    きのう、机に広げっぱなしにしていたノートを 

    カバンに 

    充電していたイヤホンも、手にとって 

    おばあちゃんが買ってくれたコートを羽織って 

     

    窓を開ける 

    夜のあいだ 

    雨が降っていたから空気が澄んでいる

     

    窓を閉めて 

    荷物を確認 

    時計と指輪をつけて 

    新しく買った、帽子 

     

    手袋をコートのポケットに 

    リュックを持って、一階へ 

     

    冷蔵庫を開ける 

    きのう買っておいたカフェオレ 

     

    靴下を履いて、家を出て 

    きのう空気をいれたばかりのチャリ 

    日曜日なのでひとが少なくかんじる 

     

    カフェにて 

    アボカドドッグと 

    ハニーミルクラテ 

     

    髪の毛を切りたいとおもう 

     

    もう一軒、カフェへ 

    ホワイトモカのグランデサイズをタンブラーに 

    そして、コンビニへ 

    ゼリー飲料と、たらこのおにぎりとパンを買う

     

    仕事場に到着 

    いちばんのり 

     

    掃除をして、ポットのお湯を沸かす 

    加湿器に、水をいれる 

     

    「散歩したときに、犬に会った」 

    「きのうの晩ごはん、なに食べた?」 

     

    退勤するとき、加湿器やらポットを片づける 

     

    「じゃあ、おつかれさまでした!」 

     

    チャリに乗って 

    きょう一日のことをおもい出しながら 

    チャリを漕いで 

     

    家に着いて 

    眠くなって 

     

    そのまま就寝 

    お風呂は、あしたの朝はいろう 

     

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    Perfect Day 9

    ひかりのなかで、目を覚ます

    夏のあいだに、ベッドのよこの窓を開けたまま

    眠りにつく癖がついた

     

    窓からはいる空気が

    夏のそれとはまったく異なる

    秋めいていることに気がつく

     

    きょうから、秋が始まった

     

    ベッドから抜け出して

    そのほかの窓をひとつずつ開けながら

    きょうが完ぺきな一日になることを、予感する

     

    窓から外を見つめると

    庭の木が、折れている

    アカシアの樹

    三メートルくらいあるから

    しっかりと折れているのが見える

     

    身支度を終えて

    庭にでる

    葉も、たわわによこたわる樹は

    おおきな鳥のようだ

     

    ひとがまばらで、静かな電車に揺られて

    夢中になっている本を読んだ

    耳にはイヤフォン

    おなじ曲を繰り返し、飽きずに聴く

     

    深く呼吸をしている意識のなかで

    そのうちにお腹のあたりがあたたかくなって

    うたた寝をしてしまう、みじかく夢を見る

     

    高校卒業間近の教室

    いまはもう会わなくなってしまったひとたち

    お互いがお互いを

    大切におもっていることが、伝わるくらいの

    温度と距離感

    卒業してしまったら関係は

    かたちを変えてしまうこと

    それぞれが、理解している

     

    それとなくおもいを言葉で伝えながら

    時間が過ぎていくのを、惜しみながら

     

    懐かしい気持ちで目が覚める

    夢の中であっても

    ひさしぶりに再会できた

    どうか元気でいてくれ、ともおもう

     

    ダンススタジオに到着

    ストレッチをして

    からだが整っていく

    まえは精一杯だったことも

    だんだんと、馴染んでいく

     

    どこまでも手足が伸びていきそう

    たくさん汗をかいて、水を飲む

    その余韻に浸りながら

    スタジオをあとにする

     

    たまたま見つけた町中華

    厨房に、そしてフロアに

    活気があって

    そしてなおかつ

    とてもおいしい

     

    常連らしきお客さんたちとテレビを囲む

    秋の町を、散歩

    あたらしい口紅を買う

    古本屋で、本と漫画を買う

    探していたDVDを安くゲットする

    いい色、かたちのヴィンテージブラウスをみつける

     

    スーパー銭湯へ

    いたるところで、水という水が落下する音で

    耳が、いっぱい

    椅子がタイルの上を滑る音も、あちこちから

    鳴り響くのが、なんだか心音のようだなあと

     

    ひとはからだが大部分を占めていて

    顔の範囲はほんとうにすくない

    なんどもおもうことをまた、おもう

     

    いろんな年月を経た

    いろんなかたちのからだと、その動き

     

    炭酸風呂にはいって、泡だけを見つめる

    だんだんと、時間が抜け落ちていく感覚

     

    サウナで芯までからだをあたためて

    目を閉じていると

    過去も未来も現在もなくなっていく

     

    じぶんのからだからこまかい粒子の

    湯気が上がっていくのをぼんやりと

     

    水を飲んで

    ゆっくり服を来て

    肌を整えて、髪を乾かして

     

    ほかほかのまま、夕方

     

    ふいに親しい、ゆきのから

    連絡が届いて、会うことに

     

    散歩をしていると、お祭りに遭遇

     

    「あれ、これって、あのお祭りかも」

    「え、どのお祭り」

    「ほら、こないだ話した」

     

    それは以前から、興味があって

    調べていたお祭りだということが、発覚

    大興奮、ぐうぜん立ち会うことができて

     

    提灯に、あかりが灯って

     

    気づいたこと

    世のなかのこと

    むかしのこと

    これからのこと

     

    言葉がちゃんと伝わっていると実感する

    相手の言葉もよくわかる

     

    ながく会話をするなかで

    未来の感触をすこし掴む

     

    帰宅するまえに、寄り道

    ひとりで喫茶店にはいる

     

    きょう、一日のことを

    おもい返したり

    交わした言葉を

    反芻したりして

     

    きょう買ったものなどを眺める

     

    時間は気にせずに、好きなだけ

    音楽を流して、あたたかい飲みもの

    かるく柔軟体操

     

    きょう買ったものなどを、また眺める

     

    本をすこし読んで、電気を消す

    窓をひとつ開けてぐっすり眠る

     

  •  

     

    Perfect Day 10

    条件1

    前日まですごく忙しい

     

    条件2

    翌日もオフ

     

    条件3

    季節は初夏が好ましい

    暑すぎず寒すぎず

     

    自然に目が覚めるまで起床しない

    ただし、午前中には起きていたい

     

    身支度を整えたあとに

    夕飯に食べるカレーをつくる

    煮立てたら、寝かせる

     

    着替えて運動

    技術や体力の向上を認識したい

     

    着替えて昼食

    ただし、ここでは食べすぎない

     

    歩いて温泉へ

    じっくりと浸かる

     

    サウナも、はいる

    1.5キロほど汗をかきたい

    髭もきれいに剃る

    外気浴をよくする

     

    よく冷えたビールをのむ

     

    帰宅

    夕飯にカレー

    気の置けない友人が

    いっしょなら、なおいいのだけど

     

    観たことのない映画を一本観る

    とてもいい映画であってほしい

     

    水をよく飲んで、就寝

     

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    Perfect Day 11

    7時すぎに起きる 

    たぶん、ふたりは朝仕事で 

    その時間に家を出てくとおもう 

    玄関まで、はるかと見送りに 

     

    そのあと二度寝する 

     

    10時すぎ 

    バイトだからと、またひとり 

    家を出てく 

     

    はるかとふたたび、玄関まで 

     

    たぶん 

    そのひとはなにか忘れものをしていく 

    いつも、かならずなにか忘れて 

    「また取りにくるからね」って 

     

    そのあと 

    はるかとオノシマさん、わたしで 

    昨夜の、片づけをする 

    飾りつけを剥がしたり、食器を洗ったり 

     

    オノシマさんの誕生日だったので

     

    スピーカーで、音楽流しながら 

    三人で片づけをする 

    きのうの会話の、どこがおもしろかったか 

    ポイントを話して、笑いながら 

     

    13時ころ、掃除が終わるとおもう 

     

    なんかすごくきれいになって 

    整理整頓もされて 

    床がひろくかんじるとおもう 

     

    「昼ごはん、いっしょに食べましょ」 

     

    と、オノシマさんにいうけれど 

    きっと食べずに帰る 

    だからふたりで階段まで見送る 

     

    部屋にもどって 

    音楽を、変えて 

    とってもかるく、はるかとごはんを食べる 

    なんやかんや、しゃべって 

    15時ころに、なってそう 

     

    わたしは、まんがを読みながら 

     

    17時までに準備を終わらせて 

    はるかと、ダンスのレッスンへ

     

    バスで、最寄りまで行って 

    そこから歩いて 

     

    たぶん、お互いイヤフォンをつけて 

    先週の復習しながら向かう 

    ダンススタジオにはいるまえに 

    コンビニに寄って 

    そこでまた会話が再開する 

     

    「靴下忘れた」 

    「えー、またなの?」 

    「うん、またー」 

     

    21時すぎまで、レッスンを受ける 

    ピルエットが、ちゃんと決まる 

    クロスフロアのバリエーションも、たのしい 

     

    やっぱりかるくごはんを食べた日 

    おもい荷物をもって移動しない日 

    つながる感覚があるなあ 

     

    日々、そうしよ!って 

    その時間はおもっているのだけど 

    現実、そうはいかない 

     

    コンビネーション、わたしが好きなやつ

    音のニュアンスまで届きたい 

    レッスンが終わったあとも 

    スタジオは、解放されているから 

    あたらしい技を習得するために、居残り 

     

    そんな簡単にはいかないこともわかっている 

  •  

     

    Perfect Day 12

    朝起きて 

    寝ているあいだに見た夢を 

    憶えているかどうか確認する

     

    いい夢でも、わるい夢でも 

    憶えているほうがいい 

     

    忘れてしまうと 

    それについてかんがえたかったのに 

    つまらないから 

     

    というか 

    ほとんどがどちらとも、いいもわるいも言えない 

    意味のわからないようなものばかりだ 

    夢というのは 

     

    天気についてかんがえる 

    晴れているほうがいいと 

    さいしょはおもうけれど 

     

    けっきょくはどちらでも 

    なんでもいいよな、って 

     

    心がまえを変えればいいだけのことだし 

    そういえば、この部屋には窓がなかった

     

    将来とか愛について 

    すこしおもい巡らすけれど 

    そんなものあるのだろうか 

     

    あるのなら、

    いま この時間っていったいなんなのだろう 

     

    他人についてかんがえる 

    じぶんではない、じぶんの外側にいるひと 

    じぶん以外のひとが 

    だれもいなくなった 

    世界のことを 

    想像してみる 

     

    でも、どこかにはいたほうがいいとおもう 

    ふつうに、ふつうのことだけど ふと、そうおもう 

    じぶんとつながっていても、そうじゃなくても 

    たったいま、どこかにいる他人のことを 想像する 

     

    かんがえることについて、かんがえる 

    かんがえすぎているときは深呼吸する 

     

    とくになにもせずに一日が過ぎていく 

    できることなら、

    憶えていられる夢を見たいとおもって 

    目を閉じる 

     

     

  •  

     

    Perfect Day 13

    朝、起きたら 

    まず、とても晴れていて 

     

    寒すぎず、暑すぎず 

     

    雨が降る音は 

    寝るとき聴こえているのは好きだけれど

    朝、外へでる日に降っていると 

    一日が終わったような気持ちになります 

     

    お風呂を沸かす

    歯を磨くなどしながら 

    それを、待つ 

    窓という窓を、開けて 

    風を通して、外の匂いを嗅ぎながら 

    お風呂に、浸かりたい

     

    あがると、ほかほかのおにぎり 

    それに、海苔を巻いて食べたい 

     

    いつかの旅館で、朝ごはんに 

    あたたかいおにぎりが出てきたときは 

    うれしかった

     

    その日は予定は、あえて決めない

    ふと、あたまに浮かんだところへ 

     

    日が暮れるころに帰る 

    夕方に電車に乗ることが好きになった 

    地下鉄はいまでも嫌い 

    窓があって、混んでいない車内なら 

     

    ラジオを聴きながら、ホットケーキを焼きたい

    ホットケーキは食べることよりも、焼くほうが 

     

    まんべんなく、おなじ色になってほしい 

    いわゆるホットケーキというイメージに

    どこまで近づけることができるか 

     

    そのあとは 

    本を読んで 

    静かに過ごしたい 

     

    すっかり、暗くなったら 

    すこしし散歩に出かける 

     

    夜になって 

    暗くなると 

    ちかくの川にいる魚が活発に 

    飛び跳ねる魚を見つめながら 

     

     

  •  

     

    Perfect Day 14

    8時すぎ 

    だらだら起きて、家の掃除をする

    身支度を済ませて、簡単にごはん

     

    給料日だったので、昼は 

    焼肉ランチを食べにいこうとおもいたつ

     

    車で 

    スーパーに買いものへ 

    本屋に行ったりもする

     

    家に帰ってきて、すこし休んで散歩をする 

    ふらふら寄った酒屋にレアなウイスキーが 

    定価で売っていたので、おもいきって買う 

     

    ちびちび飲めば、一か月は持つ 

    すこし飲んでは、天井を眺める 

     

    21時半

    買ったウイスキーを開ける 

    一日があっという間だとおもう 

     

    23時すぎ 

    はやめに寝る 

     

  •  

     

    Perfect Day 15

    海沿いの知らない町にて

    日の出まえに目が覚める

     

    その町の海で 

    日の出をみる

     

    海沿いのカフェ 

    窓から海が見えて、木製の 

     

    ミルクティーつきの 

    ホットサンドのモーニング 

     

    じぶんの部屋でも 

    ホテルの部屋でもないお部屋に帰って 

    洗濯を2回する 

    掃除機もかける 

     

    ふたたび、そのお部屋を出て 

    ホットケーキのお店にて 

    サラダとポテト、それと 

    ホットケーキのランチセットを 

    テイクアウトして 

    見憶えのある丘に登って食べる 

     

    知らない丘ってなんかこわい

    登ってみても 

    なにがあるかわからないから 

    だから、丘だったら 

    知っている丘がいいとおもう 

     

    ひろがっている町のことは知らない 

     

    知らない町を 

    ひたすら歩く

     

    お店がいっぱいがある通りを、ぷらぷら 

    だれかとじぶんにちいさななにかを買う 

     

    量り売りのクッキー屋さん 

    クッキーとチョコ、グミ 

    おなかがすいたら 

    歩きながら食べる 

     

    夕暮れは、海にて 

    だれかに連絡するかもしれないし 

    しないかもしれない 

     

    いつのまにか 

    じぶんのおうちまで辿りついている 

    ビデオを見ながら 

    ミルクティーとポテトチップ 

    家族とのおもい出の、バターケーキ

     

    ピンク色に包まれながら 

    ゆたんぽといっしょにベッドへ 

     

    完ぺきなんじゃないかとおもう 

     

  •  

     

    Perfect Day 16

    朝日が昇るまえに起きて

    チャイラテをつくって

    タンブラーにいれて

    それを持って、海まで

     

    崖を降りていった

    なまえのない、海

     

    チャイラテを飲みながら

    朝日が昇るのを

    ぼーっと眺める

     

    お気に入りのカフェ

    そこのパニーニが美味しい

    ハムとチーズのシンプルな

    ドリンクと、いっしょにテイクアウト

     

    家にもどって、ベッドのリネンをすべて洗う

    たくさん、柔軟剤の種類を揃えてあって

    その日の気分で、なにをつかうかかんがえる

     

    きょう包まれたい香り、という基準を持って

     

    ほんとうにめっちゃ美味しいポケを

    テイクアウトしてふたたび、海へ

     

    砂浜にラグを敷いて、ポケを食べながら

    海に潜ったり、ダイビングしたり

    サーフィンしたり、昼寝をしたり

     

    海で遊んでも、つかれない

    すっきりする

     

    意識高めの、カフェ

    そこにいるときは、意識高い気分

    ピタヤボウルを買う

     

    海に戻ると、夕暮れ

    ピタヤボウルを、食べながら

    夕陽が落ちていくのを眺める

     

    マジックアワーまで

    しっかり見届けてから

    紫とピンク

    オレンジのグラデーション

     

    帰宅して、湯船に浸かる

    柔軟剤のいい香りがする

     

    洗い立てのシーツに

    包まれて、就寝

     

     

  •  

     

    Perfect Day 17

    マルセイユでの公演が終わった

    翌日のオフ

     

    公演がある日はつらいので

    海外での移動もなにもないオフの日は

    それだけで輝いて見えます

     

    朝食に

    自然と

    みんなおんなじ時間に集まってきて

    みんなでごはんを食べるのが、好き

     

    だれに取られるでもないのに

    ものすごくがっついて

    ごはんを食べるひとがひとりいて

     

    そのひとのがっつく様子を見ながら

    食欲失せつつ食べる

     

    みんなでチンチン電車に乗って

    ホテルのフロントで聞いたプライベートビーチへ

     

    白と煉瓦色の街並みを抜けていくと

    見たことのない色をした海

    濃い藍みたいな、色だった

     

    岩場にシートを敷いて

    みんなそれぞれ寝たり

    本を読んで、フランス語を勉強したり

    沖にある大岩まで泳いで競争したりした

     

    ごはんをがっつくやつは

    泳ぎ方もがっついていて

    やはりそれを遠目から眺めつつ泳ぐ

     

    ダイビングもシュノーケリングもしたことないのに

    いきなり大海に放り込まれて

    クジラと泳いだ日のこと

     

    となりで泳ぐひとが

    フィンをつかい慣れていないのか

    溺れそうになっていて、手を握り合いながら泳いだ

     

    船のうえで、クジラの歌を聴いた

     

    街まで戻って、ジェラートを食べ歩きして

    美術館で演劇かパフォーマンスかなにかを

    みんなで観た

     

    終わって外に出るともう夜で

    港の観覧車に

    みんなでぎゅうぎゅうになって乗る

     

    夜ごはんは港でズィール、カキをみんなで食べる

    やつはカキもがっついて食べる

     

    みんなでホテルまで歩いて帰る

     

    みんなで、というのが

    わたしの中の条件なのかもしれない

     

    なんでも完ぺきを求めすぎだとよく言われる

    みんなに完ぺきを押しつけているのかもしれない

     

    ほんとうに食べたいわけじゃなくて

    完ぺきのために

    ジェラートを食べている、気がする

     

    ぜんぶ嘘

    というか、それらはつくられたものでしかない

     

    あの日、舟のうえで聴いたクジラの歌

    あれも、つくられたものでしかないの

     

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