海を、こう抱えているようなかんじで
曲線に、あっちのほうに 白いホテルが建っていて
広い庭に、プールがあったり
人工的な、木が植えてあって
その、こっち側がプライベートビーチ
泳げる範囲が仕切られている
天気がすごくよくて、白い砂浜
砂自体が、すごく熱くて
おにいちゃんと、騒ぎながら
海に、はいって行ったのを憶えている
点々と、ベンチが置かれてあって
とおくに座っているひとが、ここから見える
パラソルを借りることができて、借りて
横になれるベンチを、こう
ふたつ置いて、まんなかにパラソルを立てた
すごい、きれいだったのを憶えているのだけど
はいるのが苦手で
「色が濃いところに行っちゃダメだよ」と
言われていたのもあって
レジャーシート、茣蓙、パラソル、クーラーボックス
ちいさい水槽が、ふたつ
その水槽に、弟が石とか
海辺のちいさい生き物をいれて、遊んでいる
サンダルを脱いで、海に
はいろうとするんだけど
なんか、足裏に なにかかんじる
で、やがて 微生物がいることに気がつく
波打ち際の、ちかくに
それがくすぐったくて、きもちわるいんだけど
なんかたのしくて
砂のなかに、手をいれて遊んでいた
つかれて、さいごは茣蓙のうえで
タオルケットをかけて、眠ってしまった
波打ち際で
東京から来た、おねえちゃんと遊んでいて
泥に埋まったり
泥のお城をつくったり
海はしょっぱくて、波もあるし
浮き輪をつけて、浮いていた
おとうさんは
得意げに、沖まで泳いでいくのだけど
それが下手くそに、見えて
かわいそうだな、と おもっていた
ホテルが、たくさん並んでいて
ショッピングモールもあるのを、背中に
すごく青くて、広い 海
地球って、まるいことを 思いだされるような
曲線の水平線
あまりにも青いのに、はいってみると
透明だったのが、不思議だった
海の底に、青が塗られている
と、おもっていたから プールみたいに
けれども、しょっぱくて
あまり、たのしめなかったのが ショックだった
海岸線が
まるく伸びているはずなのに
まっすぐ、歩いていたのはなんでなんだろう
泥の砂
海の家が三軒、並んでいる
そのどっかの、一個から
走ってきた
毎年、洪水のあとに来るから
畳とか浮いてる
茶色くて、いろいろ浮いてる
おとうさんは乱暴で
向こうのテトラポットあたりまで泳げ、みたいな
その手前の、10人くらい乗れる
おおきい浮き輪まで泳いだんだけど
ゴーグルも無しに
足も、底につかないから
その、浮きに 登るのが
すごい、たいへんだった
弟はまだ生まれていなくて、おかあさんと犬がいた
おかあさんは、むらさき色のビキニに
むらさき色のパレオを巻いていた
おとうさんは、すごいハイレグを履く
ひとが見て、大丈夫なのかな っていう
いっぱいひとがいて
わたしたちだけじゃなく、家族連れとか
けっこうひろい、海水浴場
海は、深緑
黒っぽい、青くなかった
いとこの、ひろみちくんが
わかめをかぶって、みんなを追いかけてくるのが
とにかくたのしかった
この海岸線から
つきでている防波堤が、あっちのほうにある
シャワー室があって
いとこの、なおこちゃんと いっしょに、はいったんだけど
五歳年上で、中学生だったから なんかドキドキした
家族と、えーっと
母の友だちの、家族と
みっつくらいの家族と、海へ行った
わたしは 一歳とか、0歳だった
写真を見ていたら、思い出すのだ
このビーチよく行ってたな、って
そこで、バーベキューをするのだとおもう 白いベンチ
緑の芝生があって そこに、わたしは座っていた
砂浜、真っ白い スコップで、砂遊びをした
海は
めちゃくちゃ、きれいなエメラルドグリーン
透明
さかなが、めっちゃいる
鮮やかな色をしたさかなではないのだけれど
振り返ると、おとうさんたちはあのベンチで
ビールを飲んでいる
砂とかじゃなくて
つねにごつごつした岩場で
裸足じゃ歩けなくて
たまたま、降りれるようになっているかんじの
階段を下りて、ここまで来るんだけど
うえは、道路になっていて その道路を行くと
あっちに、お父さんが住んでいた
40世帯くらいしかないような、村がある
洞窟、みたいな 空洞
さきへは行ったことがないのだけど
すこし、深くつづいているとおもう
空洞が、このへんにあって
そのまえで着替えたり
持ってきた、青と白のクーラーボックスを置いたり
晴れていて 砂利みたいな、砂浜
“砂浜”とは、言えないかもしれない
きたない海、の反対側に木が
ただ、生えていて
カラフルな パラソルを、おとうさんが立ててて
シートを敷いてあって
キティちゃんの赤い浮き輪を、わたしは
つかっていたとおもう
青くなくて
もうすこし、さわやかなイメージの海を
想像していたんだけど
血液みたいな、かんじの海
すごいごつごつした岩場で
ところどころ穴があいていて
波が来たあとは、穴に水が溜まって
魚がはいっていたりする
波が来ないと、虫が いっぱいいる
ワラジムシ、みたいな フナムシ?
弟はバケツを持って
こういう“さんまた”の シャベルみたいなのを、持っている
その日の夜に、サザエを食べたのだけど
わたしたちは採れないから
たぶんオトナたちが、それを採っていたのだろう
母が、すごい勢いで
崖を降りて行っちゃって 見えなくなっちゃって
ぼくと兄、それと父が取り残されて
まあ、機嫌が悪くなった父をここにかんじながら
林のなかを、歩いて降りて行った
けっこう、降りていくなかで 隙間から、たまに
右から左へ こういう角度からも
すばやく母が、遠くに 通りすぎるのが見えるのだけど
やがて、ちいさな入江に辿りついて
そこは、真っ白い砂浜
異様に明るい、眩しくて なんて言うんだろう
砂浜に、太陽が反射して 目に飛び込んでくる
兄と、べつに興味もないのに ちいさい貝とか、拾って
「上と下、これとこれが合うかもねー」とか話しながら
自然と合流していた母と
父に「子どもは子どもで遊んでるよー」という
アピールをしながら
おかあさんが、ベビーカーを押していて
もう片方の手で、わたしと手をつないでいた
砂浜に海藻みたいなのが、べちゃあって
見渡すかぎり、打ち上げられていて
澱んだかんじ
きたなくて、とにかく足がもつれる
匂いも、よい匂いではなかった
カメラを構えて
笑顔だった母が、一瞬
「あ」っとなった瞬間
波にのまれた、わたし
帰りの電車
震えていたのを憶えている
道路があって 駐車場にクルマを停めて
クルマ酔いが激しいので
気持ち悪くなりながら、降りて すぐ
そんなにきれいでもない、砂浜
海の家をだすような、ゾーン で、海があって
冴えない海
おとうさんの荷物は、簡素
リュックひとつに、バスタオル
水際に足を浸けたら、なんかくる 無数に痛い“なにか”
おとうさんを呼んで、はいっても
「これは痛い」ってことで
地元のひとらしき、ひとに
「すごい、蚊まれるんですが、なんですか?」って、聞いたら
「チンクイだよ、時季外れだからチンクイがいるんだよ」って
浅瀬のところを、よく見ると
ちいさいのがびちびちしてて
諦めて、砂で遊んだ
国道135号線に沿って
防波堤が、立っていて
いまは、つかわれていない入り江に
階段を下りていく
すべり浜
底に海苔が張りついていて、歩くと足をとられるから
砂浜というよりも、磯
レスリングの、あれみたいな
白黒のしましまのを着ていて
父親に抱えられて、海に放りだされる
もしくは、ぶん投げられる
それを繰り返しているうちに
泳げるようになった
白い砂利みたいな、砂浜
岩場が両サイドにあって
沢遊びをしているチームが、あのへんに
浅瀬で遊ぶチームが、あのへん
そんなに泳げないのに、わたしは
遠泳チームに、はいってしまった
けっこう、とおくに見える
つきだしている岩を、Uターンして戻ってくる
戻ってこれるか、わからないから
とにかく緊張した
結果、戻ってこれたのだけど
岬のほうへ行って
柵を越えて、岩場から海をのぞいて
すごく、たかくて
左のほうに、灯台があって
ひかりが、ただ回っていた
ここまで連れてきてくれた
タクシーの運転手のおじさんが
「あんまり見おろすと、吸いこまれちゃうよ」と
「海のほうへ出てみたい」と、お願いして
岬の真下の海岸まで 連れてってもらった
ちいさな、入江
ひとりで乗るような、ボートが
いくつか、浮かんでいる
波が荒くて、泳げるような海ではなくて
白い珊瑚で、地面が埋め尽くされていて
そこで、珊瑚を たくさん拾った